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庄野潤三著 『鳥の水浴び』 を読んでいる。
最近 家内が好んで読みだした作者晩年シリーズの、一冊。
就寝前のひととき 楽しそうに読みふけっているのを見て、私も読みたくなったのだ。
もうすぐ金婚式を迎える夫婦がどんな暮らしをしているかを書きたい、晩年の庄野氏が そう思って書き出した連載私小説の五作目だ。
とりわけて大事件が起こるわけでもなく 淡々と日常生活が描かれているだけなのだが、年齢的にも いまの私たちに一致するからだろう、ひとつひとつの言葉に大げさでない愛があふれていて 私の心を満たしてくれる。
「山の上の家」 の庭は、「風よけの木」 で囲われている。
木々には、季節季節にそれぞれの、愛らしい花が咲く。
いろんな種類の鳥たちが寄ってくる。
そんな光景がながめられる庭のある 夫婦ふたりの庄野家に、家族や知人が訪ねてくる。
奥さんが、手料理を来客にふるまう。
近所の知人が 手作りのバラの束を分けてくれる。
友人や親せきと一緒に観る宝塚歌劇、娘からの手紙、作者が吹く夜のハーモニカに合わせて 奥さんが歌う…
「ありがとう」 「うれしい」 「よかった」 があふれる、日常生活の物語。
『鳥の水浴び』を読み進むうち、私にも 愛らしい花や実をつける木々との暮らしがあったことを、懐かしく思い出す。
名も分からない珍しい鳥たちも、寄ってくれていた。
会社のホームページの 「工場周りの木々の花」 という名のコーナーで それら木々や鳥たちも紹介していたなぁ、と。
私なりの 『鳥の水浴び』 を書き残すことができれば いいのになぁ
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