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半日で大切な思い出を作れる場所は、と家内に問われて、すぐに思いついたのは、南禅寺周辺だった。

50年前の今日、南禅寺三門の楼上から南西に遠望できる都ホテルで、私たちは結婚式を挙げた。
この日に、南禅寺三門から都ホテルを眺めるのが、私たちにとって最もふさわしい今日の半日の過ごし方だと考えたのだ。
半日というのは、歩数にして1万歩以下だからだ。
1万歩を超えると、もうしんどい。

南禅寺三門山廊を見上げて、はたと困った。
まるで猿梯子である。
私も登るのが難しそうなのに、家内は絶対ムリ、と諦めかけていたとき、家内は登ってみると言う。
家内の勇気に励まされて、なんとか楼上へ上がることができた。

まるで石川五右衛門の気分である。
この景色は、50年経っても変わらない。
それが、たまらなくうれしい。

昼食は、都ホテルでとることにした。