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梅の嫁入り先

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先日、まえの家でお世話になった植木屋さんが、久しぶりに訪ねてくれた。
託していた梅の 嫁入り先が決まりました、と 知らせに来てくれたのである。

嫁入り先は、三条大橋西畔にある 瑞泉寺というお寺だと 教えてもらった。
瑞泉寺は、この地 三条河原で処刑された豊臣秀次一族の墓所があるところだ。
高野山青厳寺で自刃した秀次公の首をはじめ、処刑された子供婦人あわせて39名と 公に殉じて自刃した家臣10名が、この寺で手厚く弔われている。
謂れある寺の境内に あの早咲き紅梅が移植されると聞いて、安堵とともに 少し複雑な気持ちである。

毎年1月の中ごろになると、小枝すら見えないくらい 満開の紅花を咲かせていた あの紅梅の木を、懐かしく思い出す。
「工場まわりの木々の花」 の縁で 親しく接していただいた植木屋さんのご厚意に、深く感謝したい。
秀次公の弔い寺で余生を送る あの紅梅が、また 道行く人々の心を和ませる存在であれば、こんなにうれしいことはない。
幸多かれと祈る。