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コロナに思う

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先日の夕方、烏丸二条の交差点で、急に雨が降ってきた。
烏丸通りを 東側から西側へ渡ろうとしていた時である。

烏丸通り優先なので 東西に渡る信号待ち時間は、けっこう長い。
雨足は激しくなり、車道のアスファルトに 跳ね返り雨が躍り出した。
用心して持って出てきた 75cmの雨傘でも、足元がすぐに濡れだした。

左隣に 帽子を目深にかぶった少年が、信号待ちしている。
帽子から 高倉小学校の生徒だと、すぐに判った。
重そうなリュックカバンを背負って 彼は、まっすぐ前を向いて 辛抱強く信号を待っている。

背恰好が、小学生だった 孫の陸玖に似ている。
思わず、雨傘を 少年の肩にかざしかけた。
彼は、ちらっとわたしを見て 横ずさりして、わたしから遠のいた。
ちょっと申し訳なさそうに、小声で「いいです」と言いながら。

わたしは、すぐに悟って 無理強いはしなかった。
知らない人に近づいてはいけない、いや 今はコロナで、2メートル以内に知らない人に 近づいてはならない と、学校でも家庭でも 注意されているのであろう。
いずれにしても、わたしが軽率だった。
彼は、正しい行動をとったに過ぎない。

だが、少しさびしい気持ちになった。
困っている人に手を差し伸べることは 自然な感情なのに、それが許されない 今の状況が、なにか さびしい。
コロナが、その状況を加速化した。
コロナを 憎く思う。

信号がやっと青に変わって 少年は、雨の中を駆け足で横断して、向こう側の歩道を 南のほうに消えていった。