YAMADA IRONWORK'S 本文へジャンプ
一枚の 幼い絵

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引っ越しの時、納戸の上の棚の奥にしまい込んであった 幼いころの絵を見つけた。
幼稚園から中学校1年までに描いた絵 20枚ほどが、くすみのついた大丸の包装紙に 包まれてあった。
母が大事にしまっておいてくれたのだと思う。

その中に、二重包装の表書きに 「金賞」と書かれた絵があった。
縦38cm横54cmの この絵の裏には、拙い字で「1ねんろくみ」と書かれてある。
この絵を見て、なぜ金賞なのか 理解に苦しむが、その被写体は すぐに理解した。
そのころ住んでいた西大路姉小路の、西大路を跨いで斜め北向かいにあった 「進駐軍の門」である。



アーチ形看板には、「STATION COMPLEMENT CAMP KYOTO  8011th ARMY UM(N?)IT」と 読み取れる。
これは、8歳上の姉が書いてくれたことを うっすら記憶している。
「補足基地 京都駐屯所 第8011陸軍部隊」とでも いう意味だろうか。

ハーシーチョコレートにつられて GIの腕に抱かれて接収構内に入り 迷子になったわたしを母が気狂いのように探し回った という記憶は、姉たちの話から 形作られたものである。
この絵の「進駐軍の門」から 接収構内に入ったに違いない。
GIの歯と掌の白さ そして体臭は、この話から残る、ほんとうの記憶である。

この 拙い絵は、わたしの幼い記憶の原点であることは 間違いない。