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サンザシの花

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植木鉢のサンザシの木に、白い花が咲き出した。



10年前、そう 東日本大震災の年の夏だった。
チャン・イーモウ監督の 『サンザシの樹の下で』 という 中国映画をみた。
文化大革命下の悲恋物語だったような記憶だが、よく覚えていない。
ただ、たぶん長江上流の 内陸地方の殺風景な丘に 大きく広く枝を張る樹、それを見上げながら通り過ぎる主人公の少女の あどけない笑顔、そんなワンシーンが 頭の片隅に残っている。
あの枝を張った樹が、サンザシだったのか。
花を咲かせていたようにも、実を結んでいたようにも、みえなかった。

去年の秋 コロナ疲れをベランダいじりで紛らわせようと、10号の植木鉢を買いに 出町柳の花屋さんへ出掛けた際、赤い小さな実をたくさんつけた 小さなポット鉢を見つけた。
「ルビーサンザシ」 という名札が付いている。
無性に懐かしい気持ちになって、思わず買い求めてしまった、狭いベランダ事情を顧みずに。

前の家から持ってきた 姫リンゴ。
長男の嫁が いつかの父の日にプレゼントしてくれたのだが、地植えしたら 大きく育って、4月に かわいい花で、9月に 赤いプチ実で、楽しませてくれた。
鉢植え替えのやり方がまずかったのか 枯れてしまって、その後釜に サンザシを鉢替えしたのだ。

サンザシの花って、こんなにかわいい花だったんだ。
この秋には きっと、赤い小さな実をいっぱい 実らせてくれることだろう。