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神島(こうのしま)

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時代とともに変わり、失われていくものがある。
その中には世代を超え、次の時代へと語り継いでいきたいものもたくさんある。

かって、絶滅危惧種のカブトガニが干されて畑の肥料にされるほど獲れた入江があった。
岡山県の笠岡湾である。
神島は、この湾の南にちょうど大きな防波堤のように存在した。

神島は、四国と形も向きもよく似ている。
四国八十八ヶ所霊場を模して神島へんろ札所を建立した先人篤志家の心持が、よくわかる。

24年の歳月と300億の費用をかけて行われた国営笠岡湾干拓事業は、土地と水が乏しいというこの地の長い悩みを解消したかにみえるが、神島は島でなくなった。
湾は、陸続きとなった神島の東に笠岡市中心部に向かって細長く伸びる航路を残すのみ、となった。

9月の第三日曜日、神島天神社の海上渡御が行われる。
泊地を干拓で失ってもなお、続けられている。
いつまでも残ってほしい。