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空を見あげる。

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空を見あげる。
青空なら、そのかなたの方を。
小雨なら、かざした傘越しに。
強い雨なら、借りた軒先から。

背筋首筋が伸びるし、近視眼疲労の目の保養にもなるし、人の顔色から開放されもする。
なによりも、気持ちが晴ればれする。
要らん考えが、どっかへいってしまう。

若いとき、人の口元を見るようにしていた、目と目が合うのが嫌だったから。
バリバリ仕事をしていたころは、見落とさないようにと、近視眼を研ぎ澄ましていた。
細かいところまで気が付くねぇとの言葉に、いい気になってもいた。
年老いてからは、足元が危ないからと、下ばかり見て歩くようになった。

80歳を間近にして、ようやく、ときどき空を見上げている。
雲のひょうきんな形をよろこび、その行方を追う。

この感覚を、忘れないでいよう、と思う。