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苦海浄土

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天変地異としか、言いようがありません。
ついこの間 慣れない地震に怯えていたところに、梅雨明け前のびっくりな豪雨。
京都は 幸い最小限の被害で済みましたが、被災地の悲惨な報道に接して、心が痛みます。
それに この猛暑。
異常気象が常態化しているみたいです。


1970年 新居浜の明屋書店で買った 石牟礼道子さんの 『苦海浄土 わが水俣病』 を、読み返しています。
石牟礼さんが なぜ 「苦海」 と 「浄土」 という矛盾する言葉をタイトルに使ったのか、わたしは それを、「のさり」という言葉の意味を知って、理解することができました。
3年前 不知火海を旅して、やっとわかったのです。
ブログ№452 『ゆりかごの海』 に記しました。

うめくような苦悩を潜ってこそ見えるもの、その苦悩に寄り添い続けた石牟礼さんには、それが見えていたのでしょう。
わたしは、ただ想像するだけです。
『苦海浄土 わが水俣病』 を読み返して、想像力で理解するしかありません。

石牟礼さんの作品を読むとき、かって確かに存在した豊饒な世界を、懐かしく思い起させてくれます。
人も渚の虫も貝たちも、みんな ひとつながりの命として共存する世界が、目の前に現れるのです。
仏陀の涅槃図を見るように。


石牟礼道子さんが、今年2月10日 亡くなられました。
享年、90歳。
近代化の波に押されて失われてゆく穏やかな暮らしを、あらゆる文学的な手法を用いて、守り抜く、それを実行し続けられた一生でした。
どうか、安らかにお眠りください。